erŌudon制作後記
- ooudon Ōudon
- 3 分前
- 読了時間: 9分
2023年に1stEP『Ōudon』をリリースし、その後もライブ出演やコンピレーションアルバムへの参加など精力的に活動を続けてきたŌudonであったが、『Ōudon Remix』のリリース以降はこれといったリリースも出演もなく、水を打ったように静まり返ってしまった。Ōudonというプロジェクトはその性質上、誰か一人だけにやる気があったとしても何も起こらない。もう、活動しないのかな、と私たち自身でさえ思っていたかもしれない。 しかし、約二年間の長い沈黙は「成人向合同誌をコミックマーケットで頒布します」という告知をもって破られることとなった。どういうことですか、と私たち自身でさえ思っていた。
文・いちいいず

言い出したのはいちいいずです。もともとエロ本を作りたかったけど一人でコミケに行くのは心細くて仲間を探していたんだと思います。なぬりそとairy.i.rayが二つ返事で話に乗ってくれて一緒に本を作ることになりました。せっかくならŌudonという場を使って、何ならŌudonの楽曲ともちょっと絡めたりしたら面白いのでは、ということで合同誌の企画が立ち上がります。
また、参加者が各々Ōudonのリリースした楽曲から一曲選んで、そのタイトルを冠した成人向けの漫画を描くというレギュレーションを定めました。自分たちの曲でありながら、その二次創作を作っているような、不思議な感覚です。 しかし、(2025年の初夏の話なので)この年の冬のコミックマーケットに出展したらちょうどいいね、と思い応募しますが「ドデカエロH!?」という下品かつ意味不明なサークル名が災いしたのか落選してしまいます。しばらくエロ本は胸の中に仕舞われることになりました。



時は流れ2026年の春ごろにコミックマーケット108に同じ内容で応募、ありがたいことに当選して初の(成人向けコンテンツでの)コミケ参加が決定しました。この間にライブや即売会などいくつかイベントがあり、そういう場で人と会う度に「エロ本を作ろうと思うんだけど一緒に書かない?」というありえない文句のお誘いをしていました。せっかくŌudonで作るならめちゃくちゃなごった煮になった方が面白い、と思ったためです。実際に本を手に取っていただいた方は分かると思いますが結果的にめちゃくちゃなごった煮が完成することとなります。Ōudonの曲からタイトルを持ってくるのが難しくなり、もはやエロ本の為に新曲が生まれるという前代未聞の状況に。


コミケ当選が6月頃、基本的にそこから始めたので約二か月の短い制作期間でしたが、各々が個性的でŌudonとも少しずつ接続した作品を提出してくれました。恐らく全員にとって成人向けコンテンツというのは初めての試みでしたが、どれも読み応えがあって素敵な作品です。
本を開いてまず始まるのがはゆ茶×appyの『ボーダーライン』です。個人的に、この作品は”漫画”というメディアの可能性を拡張するような、オルタナティブなものであると確信しています。とても難解ですが、何度も読むうちに何か大きな衝動を感じます。
読んでいただいた皆様は一体これは何なのかと困惑されたことと思いますが、この作品はappyが考えた詳細なプロットとそれをAIに読み込ませて生成した漫画を参考に、はゆ茶が最終的な作画を行っています。以下そのプロットの全文です。
柚希(主人公の女歌い手)
■いっこが1ページの想定
コマ割りおまかせします
======================
■柚希モノローグ《私は女歌い手、いや、シンガー》
楽屋らしき場所で衣装を着た柚希がスマホを見ている
スマホの中にはマイクの前で歌っている他の女歌い手の顔出し歌ってみた動画
柚希モノローグ《このブス、若いだけで人気なだけ!》《ガキで歌も下手!》
《最近は界隈にしょうもない奴が多くて疲れる……》
《私見た目で売ってないからなあ》
自分のインスタを確認する柚希
自撮りがいっぱいある
ライブのきらきらした写真もある(このへんは参考資料あり)
DMに通知がいっぱいきてる
■ついでにボカロPから歌唱依頼のDMを確認
ボカロPメッセージ『すみません、納期過ぎてるんですが、進捗どうでしょうか!』
柚希モノローグ《うぜーー》
柚希メッセージ『申し訳ございません!レコーディング終わりました
エンジニアさんにお願いするので補正代2万円必要です』
■CASE 1 (ここから先は1ページずつダイジェスト。毎ページ違う話になっているのが分かるようにハッキリ表示してほしい)
なごみの坂の上
柚希はショッピングカートのかごの上に座らされその状態で全身ぐるぐる巻きの鎖で縛り付けられている
「ちょっとやめて!」「なにこれ!」
周りに人はいない
ガラガラ……と勝手にカートが進み始める
「キャッ!」「無理!無理!無理!」
壁が目の前に迫る!
終
■CASE 2
でっかい電子レンジに柚希が閉じ込められている
たびたび何か叫んでいるが、そのときカメラは電子レンジの外側にあり、台詞は描写されない
そのうちウイーーンと皿が回り始め、スポットライトのように電子レンジのライトに照らされる
そのうち引きのカメラで電子レンジが元々そうだったかのように通常のサイズで映される
「チーーン♪」と小気味よい音を鳴らす
終
■CASE 3
「!」落とし穴にハマる柚希
泥水っぽいところで「うわーー」と言いながらバチャバチャやっている
ほぼほぼ溺れてブクブクブクと暴れているところに
「毒沼」と書かれた看板がひょこっと生えるように出てくる
終
■CASE 4
トイレ個室に座っている柚希
柚希はLINEのトーク画面を眺めている
通知が3とか5とか12とか、色んなひとがずらっと並んでる
それぞれ「たかし 公務員」「せいや 歌い手」「プロデューサー」「ボカロP」など、名前の横に属性が書いてある(表記統一して管理しやすくしてる)
「うーーん、結局どいつもこいつもパッとしないんだよなあ」
スマホを触りながらジョロロロと尿をしつつカメラが便器の真横断面図に移行
そこから視点が下へ移動していく
コマが変わるごとに尿がただの水滴へとだんだんと遷移
■現在の尿が幼少期の雨粒へと繋がり、そこから過去編へ入っていく演出
水滴をキーアイテムにした映像トランジション的な
ポチャンとロリ柚希の手のひらに水滴が落ちる
放課後、小学校の昇降口を出たところ
ロリ柚希は傘を持っている
(ん……)雨上がり直後、雨がやんだのを確認している
紫陽花が咲き、カエルやカタツムリなどが生き生きとしている
太陽が雲に差し込み
空に虹がかかり始めた
(お空さんも泣きやんだみたい!)
終


かくして本の全体像が見えてきました。表紙イラストはいちいいずのラフを基になぬりそとairy.i.rayが作画しました。東西南北様々な場所と接続していて、ここから何処へでも行ける、あとなんとなく夏っぽい、そんなイメージから空港になりました。
タイトルは「ジュポ(´Ō`)ジュポudon」「Ōh♡u…dondon♡」「御殿場高原ベーコン」など様々な案が出てしばらく議論が続きましたが、ノリで「( i ) (Ū) / (Ō)」に決まりそうだったところを私が止めて強引に「erŌudon」に決定しました。下品すぎると判断した為です。

度重なる締め切りの延長の末、ついに最短納期(印刷代も一番高くなる)での印刷を選択することになり、コミケ当日の僅か5日前に印刷所にギリギリで入稿しました。しかしやっと制作が終わった・・・と安心したのも束の間、印刷所から「成人向け表現の修正が足りない」という理由でリジェクトされてしまいました。これはこのタイミングで知った事で、事前の調べが足りなかったのですが、成人向けの漫画の扱いというのはかなり曖昧でその時代の潮流を見て作家や編集者、印刷所が微妙なさじ加減で修正の強さを変えているらしいのです。当然印刷所や販売するプラットフォームによってその加減はまちまちで、今回私たちが利用した印刷所は中でもとりわけシビアと言わざるを得ない基準を設けていました。このあたりの話は非常にセンシティブで、行政側の曖昧な基準によって困っている人も多いようです。どうにかしてください。
日程的に印刷所を変えるわけにもいかず、完成品は修正にさらに修正を加えたものになってしまいました。本来のデータは電子版に反映されていますのでそちらもご覧ください。






そしていよいよコミケ当日を迎えました。前日にポスターの印刷とポスタースタンドを買う為に東京中を駆けずり回った為身体がバキボキでしたが、想像より暑くもなく無事に会場に着くことができました。開場直後は皆人気サークルに向かうからか、賑わっているのに誰にも見向きもされず「これは、全体的に意味不明すぎて、一冊も売れずに終わるかも」と覚悟しましたが、次第に私たちのサークルにも目を向けてくれる人が出てきて、告知を見て買いに来ていただいたり、Ōudonのことを知らないのに買っていただいたりと、本当にありがたいことに想像していたよりも多くの方に買っていただけました。

正直に言って、この本が一体何なのか私たちもよく分かっていません。なのでTwitterでの告知やポスター、口頭での説明もふわふわしていたと思います。申し訳ないです。そして実際に会場に来て本を手に取っていただいた方は、その中身を見た上で、もっと意味不明だったと思います。もちろん買っていただけたときは本当にありがたくて嬉しかったのですが、同時に「大丈夫かな・・・」と心配な気持ちがあったのも事実です。

しかし、それでもこの本は売値以上の価値があるものだと確信しています。不本意な修正が入ることになってしまったものの、それでも納品された本を手に取ってみると、教科書みたいなありえない重さと分厚さの中に奇妙でありながら魂の籠った内容がぎっしり詰まっていて「こりゃなんかすごい物ができたぞ・・・」と感動しました。うまく説明できない、形容しがたい形だけど、多くのクリエイターの魂を感じてとにかく圧倒される。実にŌudon的だと思います。3年前にEPを作ったときのような、初期衝動がクロスオーバーする不思議な輝きをもう一度体感することができた気がします。
改めて、『erŌudon』の参加者と、手に取っていただいた皆様に、感謝します。ありがとうございました。

また、コミケのエロい島でお会いできるのを楽しみにしております。



コメント